#075

  山間の小さな駅、讃岐財田(さぬきさいだ)。小さな無人駅を出ると目の前に、幹の太い立派な木が植わっている。

  力強く枝を張り、駅舎を覆わんばかりになっているこの木はタブというらしく、スマートなものではないが、駅の守り役ともいおうか、どっしりと構えている。柵で囲われているところからして、手厚く扱われているのだろう。

  駅前には、昔は商店だったと思しき一軒家と、その脇に桜の木。人けはないが、2本の木が静かに見守る、何となく厳かな雰囲気だ。ここで特に何かを見ようと思ったわけではなく、次の列車までの空き時間に降りただけだが、忘れがたい印象を覚える駅だった。

 

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