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 旅立ちは無人駅から


 1999年10月11日
 道場→桜島→奈良→京都→敦賀→若狭高浜→道場
  道場 7:14 → 宝塚 7:27 [普通 1112B/電・103系]

  今回の出発は、三田市の郊外に位置する道場駅から。駅まではマイカーで乗り付け、駅前駐車場に留めておく。道場駅は無人駅なので、とりあえず券売機で宝塚までの切符を買って乗り込む。すぐに武庫川の渓谷に入るものの、線路はトンネルと橋で突き抜けるため、景色はほとんど見える間がない。

  谷が開け、宝塚でいったん下車。豪勢な装いの阪急駅と対峙する、窮屈な造りの駅だ。劇場やファミリーランドを擁する阪急との、力のいれ具合の差だろう(注1)。そのJR駅の小さな窓口で、今回の旅行で使用する「乗り放題切符」を購入する。JR西日本エリアの普通列車1日乗り放題で3000円。特製ピンバッジがおまけについてくる。「500系のぞみ」「サンダーバード」「オーシャンアロー」の3種類・・だが、あいにくお目当ての「500系」は品切れだった。がっかり。(結局サンダーバードに↓)

  宝塚 7:44 → 大阪 8:10 [快速 2728M/電・113系]

  福知山線の列車の顔ぶれは多彩で、古参の103系や113系のほか、元新快速の117系、東西線乗り入れの207系、そして一部221系も入ってくるので、次はどれが来るかという楽しみがある。で、次に来た大阪行きの快速は113系の8両編成。田畑の混じる住宅地から、工場地へと移り変わって尼崎へ、そして大阪へ。

 駆け足京阪奈

  大阪 8:22 → 西九条 8:26 [大和路快速 3318K/電・221系]

  今回はまず桜島線に乗ろうと思う。鹿児島県の路線のような名称だが、その実は大阪環状線の西九条から分岐するわずか4kmばかりの盲腸線で、私はまだ乗ったことがない。とりあえず大和路快速(221系)で西九条へ。西九条周辺には、背の低いビル群が雑然と建ち並ぶ。この風景、ああ大阪やなぁ、と思う。

  西九条 8:31 → 桜島 8:37 [普通/電・103系]

  桜島線の列車は、環状線の電車と同じオレンジの103系。しかし4両の短い編成で、車体はかなり色あせており、大阪中心のほど近くを走っていながら、なんだか周りの流れから取り残されているような、ローカルな印象を受ける。市街地から臨海工業地、安治川口の貨物ヤード、そしてUSJ開発中の埋め立て地へと、短いながら沿線は変化に富む。

  桜島駅は最近移動、改築された真新しい駅だが、周りは殺風景な埋め立て地。現状ではなんでこんな所に移ってきたのかと思える。頭上には阪神高速湾岸線の橋、運河を隔てた向こうには天保山の海遊館や観覧車などが見える(注2)。ここで降りてもしょうがなく思え、折り返しの列車ですぐに西九条へ引き返す。

  桜島 8:42 → 西九条 8:48 [普通/電・103系]

桜島駅周辺は再開発中で殺風景。頭上には阪神高速湾岸線 

  西九条 8:54 → 天王寺 9:07 [普通/電・103系]

  リニューアルされた大阪環状線の103系電車で天王寺へ。この駅、ホームがやたらと多いのに案内が不親切で、構造がわかりにくい。各地を旅行していると思うことだが、案内の親切さの度合いが、その土地の部外者に対する関心のほどを如実に物語っているのではないかという気がする。

  天王寺 9:18 → 奈良 9:48 [大和路快速 3228K/電・221系]

  それでもなんとか大和路快速に乗り換えて、関西線を突っ走る。大和川の渓谷を駆け抜けるともう奈良県。奈良盆地は稲刈りの最中で、いたってのどかな景色だ。

奈良盆地の田園風景 

  県の中心駅といえば、いまやあかぬけた駅ビル・高架駅が一般的だが、奈良駅は「ひと昔前」のターミナル駅の姿。JRの通らない沖縄を除いて、都道府県の中核駅で唯一新幹線も特急も来ない駅で、同じ「古都」の駅でも京都とはあまりに対照的だ。でも、こういう駅の方が雰囲気的には落ち着くものだ。

  奈良 9:53 → 京都 10:40 [快速 2602M/電・117系]

  すぐに京都行きの快速に乗り換え。新快速時代を彷彿させる117系の6両編成だが、車内はガラガラ。全線単線の奈良線で、精一杯の走りを見せてくれるものの、客は結局あまり増えずじまいだった。「私鉄王国」の牙城を崩しつつあるJR西日本も、ここではまだまだ近鉄に水をあけられているのか。

  京都の駅は、さすがに日本一の観光地の玄関口、ものすごい人の波。巨大なついたてのようにそびえる真新しい駅ビルが、黒光りしている。しかし、この人の多さといい、あまりに豪勢で威圧的な駅といい、私にはどうも居心地が良くない。やっぱり奈良駅の方が良かったな、と思う。

仰々しい京都駅ビル。人の波が絶えない 

 彦根城下弾丸ツアー

  京都 11:00 → 彦根 11:47 [新快速 3304M/電・221系]

  京都からは新快速で北上。大津から滋賀県へ入る。長浜より先の乗り換えに30分の余裕があるので、そのぶんどこかで途中下車できる。今回は彦根城のある彦根で降りてみよう。彦根城は、安政の大獄、桜田門外の変で有名な大老井伊直弼などを輩出した井伊氏35万石の城だ。

  駅を出るとまっすぐ大通りが通じていて、真正面にすでに城が見える。まさに城のためにあるような街だ。時間が30分しかないので、わき目もふらず城下まで歩き、堀や松並木を眺めて、また駅に直行。城の規模はかなり大きく、さすが江戸時代の名家の城だが、天守は外から見るだけという消化不良な内容となってしまった。

彦根城のお堀。「いろは松」という松並木が続く 

  彦根 12:17 → 長浜 12:33 [新快速 3308M/電・221系]
  長浜 12:43 → 敦賀 13:31[23] [普通 145M/電・475系]

  長浜で、8両の新快速から3両(もと急行型の475系)の鈍行に乗り換えて、ここから交流区間に入ってゆく。古い電車でスピードの割にモーターのうなりが大きく、これまで乗ってきた221系などと比べるといかにもエネルギー効率が悪そう。沿線には、三脚を据えてカメラを構える人々の姿がちらほら。お目当てはSL「北びわこ号」だろうか。

  木ノ本からは山中に入り、ますますエネルギー効率の悪そうな足取りになる。湖西線と合流する近江塩津では、臨時特急に道を譲るために6分の停車。「特急街道」とよばれる北陸線では、鈍行は有無を言わさず一方的に道を譲らされることになる。写真を撮るためホームに降りると、同じようにホームに出てリフレッシュする人々の姿。

近江塩津で特急に道を譲る 

  ここから山越えにかかり、福井県入り。敦賀到着は結局8分遅れとなった。それ以降の接続に影響はないが、こうした時刻表にわざわざ載せない「暗黙の遅れ」も、地方幹線では日常茶飯事だ。

 小浜線のどか旅

  敦賀からは、1991年の旅行以来8年弱ぶりの小浜線に入る。今回の旅程中唯一のディーゼル区間で、キハ58系の2両編成。ワンマン運転だが、内装は割合きれいだ。列車は鈍行だが、後方先頭の表示がなぜか「快速」となっていた。おそらく単なる戻し忘れだろうけど、なんとなくうれしいハプニングだ。

小浜線のキハ58系。珍しい存在となった国鉄色 

  敦賀 13:44 → 若狭高浜 15:18[16] [普通 938D/気・キハ58系]

  そんな「偽快速」は敦賀を出、もと来た北陸線の線路から分かれて西へ進路をとる。小浜線は、地図上は若狭湾に沿って進んでいるが、実際には海岸沿いを走ることはあまり多くなく、比較的内陸をアップダウンしながら進んで行く。馬力のないキハ58系なので、たいしたことのない坂でも、てきめんに速度が落ちる。

小浜線の新平野駅にて。目の前でススキの群れが風に揺れる 

  沿線には、小浜線の早期電化や高速道の早期開通を求める看板が目立つ。この10月に舞鶴線(綾部〜東舞鶴間)が電化されたと同時に、小浜線唯一の急行だった「わかさ」が快速に格下げされるなど、確かに小浜線はますます取り残され、孤立の度を深めているので、その焦りがあるのかもしれない。

  そんな中、東小浜駅には、「駅の早期改築を」。現実的かつ身近な願望が、かえってほほえましい(注3)。のちにJR西日本は小浜線の電化計画を発表したが(注4)これにより果たして本当に小浜線は活性化されるのか?

  小浜を出ると、しばらくは海岸に近いところを進む。リアス式海岸らしい、島や出入りの多い海岸だ。そんな海岸をじかに眺めてみたいと思い、若狭高浜で途中下車。

  駅から徒歩15分ほどで、城山公園という岬の公園に着く。細長い海岸の続く中、そこだけが小高い岩場になっているというおもしろい地形で、北に海、南に砂浜と山並が見渡せる、なかなかいいスポットだった。

高浜の海景色  

  若狭高浜 16:18 → 東舞鶴 16:40 [普通 940D/気・キハ58系]

  小休止を終えて小浜線の残りの行程へ。さきほどと同様、ディーゼル2両のワンマン運転。もうだんだん薄暗くなってきた。

  8年前に来たときと変わって、小浜線起点の東舞鶴は高架のホームになっていた。ここから綾部までの舞鶴線は、この10月に電化されたばかり。おかげで特急が舞鶴まで直通できるようになったが、前述の通り小浜線はますます孤立する羽目になってしまった。

  東舞鶴 17:01 → 福知山 17:45 [普通 348M/電・113系]
  福知山 17:54 → 新三田 19:28 [普通 2776M/電・117系]
  新三田 19:48 → 道場 19:55 [普通 1212B/電・201系]

  外は真っ暗になり、あとは福知山線を南下するだけ。客は多いが車内は静まり返っていた。新三田での乗り継ぎが悪く、道場を目前に20分の足止め。最後は青い201系で道場へフィニッシュ。

 注記

  注記の内容は2016年6月現在。

  1. 宝塚ファミリーランドは阪急電鉄の運営するレジャー施設で関西有数の遊園地だった。しかしレジャーの多様化やUSJの開業などに押され、2003年に閉園。

  2. もとは臨港貨物駅としての意義が大きかった駅だが、その役目を終えて縮小。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)建設に伴って1999年4月に移転したばかりだった。2001年にUSJが開園。最寄り駅として安治川口〜桜島間にユニバーサルシティ駅が開業している。

  3. 東小浜駅は2001年に小浜市総合福祉センターを併設した立派な駅舎に改築されたとのこと。

  4. 1999年12月にJR西日本は小浜線の電化を運輸省(現・国土交通省)に申請した。当時の計画として敦賀〜東舞鶴間84.3kmの直流電化、停車場設備改良、敦賀駅構内改良、14両の車両新製で約101億円の事業費が見込まれていた。この電化は2003年3月に完成している。

 

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