車両紹介 800系

 

  ★印の写真は、自由中の水色ジャージ様のご厚意により掲載させていただいています。これらの写真の転載等は、お断りします。

 800系

  800系は、神鉄の初期車両の部品を流用しつつ、車体を更新して製作されたという、歴史的価値のあった電車。車体の形状は、310/1000形に準じるもので、ドアは片開きと両開きの両方がありましたが、足回りが旧式だったので、釣り掛け式独特の低いモーター音が印象的でした。

  →800系の走行(YouTube動画。管理人のものではありません。)

  2両編成の800形と1両単行の850形をつないで3両固定化。連結部の運転台は撤去され、運転室スペースがぽっかりと空いていました。性能上3両編成が限界で、走行性能も他車に劣るため、晩年は主に三田線末端や粟生線、最終的には粟生線の志染以西で限定的に使用されていました。93年に全廃。

  ちなみに、もと800系を付随車化して1100系に組み込んだ車両として、1212(旧864)と1213(旧865)がありました。800系自体が、旧式の足回りに1000系列タイプの車体を乗せたものだったので、容姿は共通で特に違和感はありませんでした。旧式車の流れをくむ最後の車両でしたが、1100系の4連への組み替えに際して余剰となり、2両とも廃車されました。


★最後まで残った旧塗装車によるさよなら運転
93.3.21 谷上


★801編成は、晩年新塗装化されていた
91年 三木

 800系の思い出

  私にとって、800系は何と言っても忘れられない存在です。

  「ずぅいいぃぃ・・・ん」というモーターの低いうなりで発進し、まもなく、ギヤをいきなりローからセカンドに入れた時のような衝撃で前後に揺さぶられる。いかにもがんばっているという風のモーター音、しかし走りに伸びがなく、ぎこちない。駅が近づくと、「しゃぁーー」という空気の漏れるような音がして鈍いブレーキがかかり、これまたぎこちなく停車する。電車を降りると、足周りから、金属と油の混じったような妙なにおいが立ち上っていた・・。

  高校時代、私はこの3年間電車通学をしていましたが、毎日毎日同じ時間に乗っていると、やってくる車両のパターンも読めてきます。そのうちに、私は一定の法則に気付きました。それは、電車の運用が3日サイクルである、ということでした。つまり、同じ時間の電車だと、3種類の車両が順繰りで来る、ということです。そして大抵、その3つのうち1つか2つが、この800系でした。

  800系は、3両より長い編成が組めず、性能が劣るということもあって、晩年はもっぱら粟生線の末端部分で運用されることが多かったのです。

  私は一度、この800系で情けない思いをしたことがあります。ある朝、登校のためにいつものように電車に乗っていました。周りは同じ学校の学生で混雑していました。私は吊革を握って、テキストを片手に立っていましたが、電車が駅に停車しかけたそのとき、ブレーキのかけ方が悪くて、電車が大きく揺れた。とっさに吊革をつかもうとしたが、握り損ねてしまった。次の瞬間、私は電車の床に倒れていた。・・・忘れもしません。このときの電車が、800系でした。

  もう一つ・・・800系は最後まで冷房化されませんでした。夏場の暑い時期、通学の20分間なりと冷房のもとにいられるかどうかは結構大問題であり、そんなときにこれが現れると、・・悲しかった。天井では扇風機がくるくると回り、車内の熱気をかき回す。開けっぴろげた窓からは、例の妙な機械臭が漂ってくる・・。

  とはいえ、車両の世代交代は確実に進み、1500系や2000系といった車両が入ってきたのと引き換えに、800系の姿は次第に見られなくなっていきました。そして私の高校卒業と同じ頃、ついに引退の日を迎え、最後にはさよなら運転も行われたとのこと。良くも悪くも、高校時代の記憶の1ページを飾る存在になってしまいました。


それほど印象的な車両だったのに、
自らの手で撮影した800系は、この写りの悪い1枚だけ
85年 志染

  確かに、ファン的観点からすれば、800系は貴重な車両だったに違いありません。私も、もし旅行でこの電車に出会ったなら、喜び勇んで乗りこんでいたでしょう。しかし、毎日利用させられる立場となると・・・。

  鉄道ファンは大抵、古い車両、不便な列車のほうに愛着を感じます。古いものが新しいものに変えられることは、あまり喜ばないものです。しかし、実際にその列車を毎日使う地元の人々にとっては、どうだろう? 近年、旅行するたびに車両の「世代交代」を感じますが、そんなとき私は、この800系のことを思い出してしまいます。


★さよなら運転時に展示された801編成
運転席が開放されて方向幕が動かせたそうで、幻の800系「特急」が実現
93.3.21 道場南口

 車両

  編成単位 扉数 製造 両数 備考
800系 3両 2 62-68年 5編成15両
(他に1100形に改造されたものが2両)
全車非冷房・93年全廃

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