#011

  前日は九州の南の果てを巡ったが、今目の前に広がるのは北九州の洞海湾。昇ったばかりの朝日が輝き、湾をまたぐ若戸大橋がシルエット状に浮かんでいる。三日にわたる九州の旅、その最終日も天気は良さそうだ。

  かつて、筑豊の多くの炭田に近いという地の利を生かして、工業の発達した北九州。この洞海湾も、その積みおろしのために数多くの船が行き交ったことだろう。石炭輸送に大きな役割を果たした筑豊本線の起点、若松駅がここから近い。まだ覚めぬ夜明けの岸壁に、かつての熱気の名残を見いだすのは難しい。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #011