#012

  幅の広いホームと、それをすっぽり覆う古めかしい上屋。この堂々たる造りは、かつてここが九州の玄関口として、重きを置かれていた時代の名残だろう。

  関門トンネル開通まで、本州と九州を結ぶ連絡船の九州側の発着場はここ、現在の門司港駅だった。トンネルの開業により、門司港はメインルートから外れ、枝線の終端のような存在になった。重要度の点では昔と比べるべくもないが、決して軽んじられているわけではない。ホームも駅舎も縮小されることなく、かえって昔のターミナルの風情をとどめる貴重な存在となっている。

  筑豊本線からやってきた客車列車。この駅は行き止まりだから、牽引してきた機関車を一旦切り離して、反対側に回さなければならない。今、機関車が去り、客車だけが置き去りにされたかのように停まっている。機関車が牽引する列車は今や稀少で、この列車も筑豊本線の電化とともに姿を消す。がらんとしたホームにぽつんと残った車両が、どこか寂しげだった。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #012