#041

  現在では鉄道資料館として公開されているこの建物は、もと長浜駅舎で、現存する最古の駅舎とされる。しっくい塗りの上品な洋館のような建築が気品を感じさせ、白壁が青空に映える。

  明治15年(1882年)、現在の北陸本線が、ここから敦賀方面へと開通し、長浜における鉄道の歴史が始まった。翌年、長浜から関ヶ原に向かう路線が開通。明治22年(1889年)4月に新橋から長浜までが鉄路で結ばれ、長浜〜大津間を琵琶湖航路でリレーする格好で、今で言う「東海道本線」が1本につながった。長浜駅はその中継地点として重要な役割を担ったことになる。

  ただしその2ヶ月半後には、米原を経由する現在の東海道本線が開通し、当初開業した長浜〜関ヶ原のルートは廃止された。長浜はメインルートから外れ、駅そのものも移動して、明治36年(1903年)にこの駅舎は役割を終えることになった。「駅」としての務めを果たしたのは20年余りに過ぎないが、それが後々も大切に保存され、100年を経て今に至るのは、「こここそ鉄道の街」という長浜の自負によるのだろう。

 

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