石川と富山との境をなす倶利伽羅峠。現在鉄道や国道が通っているのは、旧来の倶利伽羅峠より北に位置する天田峠にあたるが、ここにある駅の名は「倶利伽藍」である。

　　到着したときにはまだ、空がようやく明るみを帯びてきたころだったが、次第に周りが見えてくる。積もった雪がそこかしこに残り、湿っぽい風景だ。

　　静寂を破り、特急列車がやってきた。峠を越え、山間の小駅を勢いよく通過してゆく。