#071

  「絶景」と言われる場所は大抵、ことに不便だったり危険だったりする。だから、そこに線路や駅があるとすれば、好きでそうしたわけではなく、制約上そんな所に造らざるを得なかったことの結果だ。造る側には難儀な話だが、おかげで乗る側は多彩な車窓風景が楽しめる。

  篠ノ井線を長野側から辿れば、上の写真でいえば、アルファベットの「C」の形に、平野部から山裾を登ってくる格好となる。その急勾配の途上にあるのが姨捨駅。駅に停まる列車はスイッチバックして、引き上げ線に入らなければならない。斜面の中腹であり、スペース的にここにしか造りようがない、と思えるような場所にある駅だ。

  通過する列車には見向きもされないそのホームからは、千曲川流域のいわゆる「善光寺平」が見渡せる。駅を出て、凍った雪を踏みしめながら少し歩く。平野部に積雪はほとんどない。それだけに、背後で雪をいただく飯縄山・黒姫山がよく目立つ。

 

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