#077

  船は慌ただしく岸を離れ、遠ざかる。JR西日本の旗を掲げるこの船は、宮島(厳島)を目指す。宮島航路は、今唯一、JRの切符で乗ることのできる船である。

  時は夕刻を迎えたが、デッキには大勢の客の姿があり、外を眺めている。振り向けば、船の立てた泡がまっすぐに残っている。それ自体が道をつくり、その軌跡はやがてかき消される。レールという予め定まった道の上をたがわず進む列車とは対照的だ。

  高層建築の建ち並ぶ本州側の海岸と、牡蠣の養殖用とおぼしきイカダが浮かぶ海。向かう先には、厳島神社の大鳥居が近づいてくる。片道10分の短い船旅の間に、いろんな光景が目に入る。

 

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