#078

  背後の山が異世界のように見える画だ。上空にたれ込めた陰鬱な雪雲の隙間に姿を現した、輝く伊吹山の偉容。北陸線の車窓に、しばし目が釘付けになる。

  琵琶湖の東岸から北岸にかけては、雪雲が集まり、近畿の中では最も雪の降りやすい地域のひとつだ。そのせいもあって、これまでなかなか、伊吹山の全容を見られる機会には恵まれなかった。強いて言えば、今回も「全容」ではない。だがむしろ、麓の側が隠れたことにより、山が天に浮かんだかのような、この不思議な風景ができあがった。

 

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