#080

  京都駅から出発する寝台特急「なは・あかつき」は、2両の電気機関車に前後を挟まれた状態でホームに入ってきた。到着後、後ろ側の機関車は切り離される。始発駅までエスコートしてきて、そののち遠路九州へと向かう列車を見送るかのようだ。客車列車ならではの儀式である。

  関西と九州を結ぶ最後の寝台列車となった「なは・あかつき」も、既にこの3月での廃止が決まっていた。夜行列車も、客車を機関車が牽引する形式の列車も、もはや風前の灯。人間味のあるこうした段取りが廃され、旅はますます無味乾燥なものになってゆく。

 

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