#087

  近年の9月は、まだ残暑厳しい時期だ。それでも、空の青さは深まり、陽の光も柔らかみを帯びてくる。朝の八幡浜駅を降りて、線路に沿って東へ歩く。盛夏の時のような、ひたすらまとわるような暑苦しさは、もうない。

  山の麓の線路を進んできたのは、2両のディーゼル車。かつて四国じゅうを駆けめぐっていた急行車両の残党。今はごく限られた列車に残るのみとなり、それもこの10月で定期の運転を終えることになる。

  「最後の秋」はもう始まっている。列車は煙を上げ、沿線の草を揺らしながら通り過ぎていった。

 

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