昨今目にする「スローライフ」という言葉は、現代社会のスピードや効率の飽くなき追求に対するアンチテーゼだろう。こうしたスローガンが生まれてくること自体、人々が日常のめまぐるしさに疲れを覚えている証拠といえるが、さりとて時代を逆行させることなどできない。「スローライフ」はあくまで、「非日常」の場でのささやかな抵抗である。
岡山と鳥取の県境をゆく因美線に、春と秋に数回、旧型の車両を使って運転される「みまさかスローライフ列車」。途中幾つかの駅に長時間停車し、地元のイベントを体験しながら、のんびりと進んでゆく。かつては急行が走ったこの線も、今では数少ない鈍行が走るのみとなり、皮肉にもそれゆえに、こんな列車を走らせることができるのだ。