#091

  子供の頃、列車は「遠くへと連れて行ってくれる」憧れの存在だった。それは、既知の世界が狭い子供独特の感覚だが、この丸い流線型が世に出たとき、それと同様のインパクトをあらゆる人に与えたのではないかと思う。高度成長のシンボル、日本の技術の結晶と、さまざまな表現があるにせよ、多くの人がこの新幹線に特別な感情を抱く理由は、もっと根源的なところにあったのではないか。

  後輩たちに道を譲りながらの「こだま」の旅が今日も始まる。それもあと1週間余を残すのみ。その出発を見届けようと、新大阪のホームに集う人々の姿。登場から44年、常に線路上にその姿のあった「ゼロ」のフィナーレが、いよいよ近づく。

 

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