5.最後に待ってた落とし穴

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 ぼろぼろ電車、北陸での奮闘

  糸魚川で駅弁「田舎ずし」を調達し、すでにホームに待機中の富山行き電車に乗り込む。北陸ではおなじみ、交直流両用の475系急行形電車。

重い雪景色の中、発車を待つ普通列車 

  糸魚川 13:19 → 富山 14:31 [普通 552M/電・475系]

  客室の隅に、「昭和40年製造、昭和60年改造」のプレートを見つけた。20年で更新、30年で廃車というのが、通常の鉄道車両のおおよそのライフサイクルだが、この電車は既に製造から36年、更新からも16年以上が経過していることになり、一般的な耐用年数はとっくに過ぎている。

  ここで、やや遅い昼食。「田舎ずし」は、すし飯と具材がこぢんまりと笹に包まれ、名前とは裏腹に上品で手のかかっていそうなすしだった。

「田舎ずし」の中身 

  親不知海岸を過ぎて富山県に入ると、激しい波の打ち寄せる海岸が右手に続き、海側から吹き寄せる横風をまともに受けながら、電車は懸命に走る。

日本海は大荒れ。電車も風をまともに受ける 

  窓のサッシがガタガタ揺れ、上のすきまから雪が吹き込んでくる。やけに冷たいなと思っていると、下からは水がしみてきている。ひどい窓だ…。窓枠に、引っかきキズでつけた落書き。高校2年生が書いたその落書きは、昭和46年のもの。これを書いた人は現在47歳……。今これを見たら一体どう思うだろう。

  厳しい日本海の季節風に、重いベタ雪。こんな劣悪な環境で、16年も更新さえされずに走りつづければ、ぼろぼろになって当然。交流・直流が混在する北陸にあって重宝されてきたのは分かるが、これ以上醜態をさらしてほしくないというのが、一ファンの願いだ。

 好事、魔多し

  居眠りして、気づくともう富山到着寸前。富山では福井行きへ、わずか3分のあわただしい接続となる。以後、「特急街道」北陸本線を、ひたすら鈍行乗り継ぎで進んでゆく。福井、敦賀、長浜で乗り換えて、神戸到着は21時43分の予定。

  慌てて荷物をとりまとめ、次なる電車に乗り込む。すでになかなかの混雑で立ち席。この電車は福井までの長距離となるだけに、早くどこかで座っておきたいな、などと考えていた。が、次の瞬間、すっと血の気が引く。

  カメラのバッグを持っていない!

  理由は明白、さっきの富山どまりの電車に置き忘れてきたのだ。旅先での落とし物・忘れ物は、未遂を含めて数多い私だが、よりによってこんなところで・・・。もうこうなったら、この先の乗り継ぎは放棄して引き返すしかない。次の呉羽駅であわてて下車。

  富山 14:34 → 呉羽 14:40 [普通 442M/電・413系]

  呉羽の改札でこのことを話すと、無愛想に「富山に戻って、忘れ物預かり所で言ってくれ」と素っ気無い。連絡のひとつくらい入れてくれればいいのに、とも思うが、嘱託か何かで、どのみちそういう話のできる相手ではなかったのかもしれない。

  しかも次の富山行きまで40分以上ある。カメラの所在が分かるまでは落ち着かないが、こんな駅にじっとしているのも不愉快だし、こういうこともなければ降りることもなかった駅だから、せっかくなので駅の周りを歩き回って、時間をつぶすことにする。しかし、歩道には雪が積もって実に歩きにくい。湯瀬温泉あたりのサラサラ雪とは違って、ベタ雪に足をズボズボ踏み入れるような格好だ。町そのものはとりたてて特徴のないものだった。

呉羽の路地にて 

  駅に戻って、待合室でテレビを見ていると、名古屋が大雪で大変なことになっているという。積雪量そのものは、この富山のと比べればものの数ではなかろうが、ふだん降らない場所で降ると大混乱になる。そして、全国ネットのJRにおいては、その影響が思わぬ場所に波及する。もしやここにも、と不安を覚えつつ、富山行きの入るホームに行くと、定刻になっても電車が来ない。

  結局、電車は7分遅れで入ってきた。これまで、北陸線のダイヤに乱れはなかったのだが、やはり嵐の影響と無縁ではいられなさそうだ。

  呉羽 15:31[24] → 富山 15:36[29] [普通 447M/電・413系]

  富山駅に戻り、落とし物預かり所へ向かう。カメラバッグが無事戻ったのは何よりだったが、ここの係員がまた愛想が悪い。いかにも面倒くさそうに書類の記入を求めてくる。自業自得とはいえ、こっちはスケジュールを犠牲にして、わざわざ引き返してきたんだぞ、と思う。最近ではめったとお目に掛からない‘国鉄の残党’に、2度も続けて出くわすとは。

 「特急街道」の罠

  富山の改札前には、名古屋方面からの特急「ひだ」の運休などが掲示されている。それの影響もあってか、北陸路線のダイヤも乱れだしていた。まさに、Uターンラッシュを直撃する格好になってしまった。

富山では雪が降ったりやんだり。ダイヤの乱れでホームには多くの人が 

  さて、時刻表を開いて、今後の段取りを検討する。この場に及んでは、特急をどこかに使わねば今日中に家まで帰れない。忘れ物の代償は高くつきそうだ・・。

  考えうる選択肢は次の2つ。

  (1)富山16:08→[サンダーバード40号]→17:38福井18:15→19:04敦賀19:21→20:23米原20:39→[新快速]→22:23神戸

  (2)富山16:35→17:33金沢17:37→[加越90号]→19:08敦賀19:21→20:23米原20:39→[新快速]→22:23神戸

  (1)(2)どちらにしても、特急区間の運賃+指定席特急料金は4710円。
  「ダイヤが乱れたときは前倒し」という原則からすれば(1)となる。
  だが、どうせ特急に乗るのなら、指定席に乗って楽をしたい。
  今から席を押さえるのは難しいだろうが、(2)の加越90号は臨時列車なので、望みありか。

  というわけで、加越90号狙いでみどりの窓口へ。この読みは当たり、なんと加越90号の指定席をゲットすることに成功した。しかし、ここにもうひとつの落とし穴が…。

  富山発16時35分の普通が、その時刻になっても入ってこない。特急「はくたか82号」(富山着定刻16:21)が遅れたために、それを待つことになったのだ。結局富山は14分遅れの出発となり、これで私のもくろみはもろくも崩壊した。

  「特急街道」の北陸本線においては、ダイヤはすべて特急優先で組まれている。そしてダイヤが乱れたとき普通は特急を待つが、特急は普通のことなど待ってはくれないのだ。

  富山 16:49[35] → 金沢 17:47[33] [普通 448M/電・413系]

  案の定、14分遅れを縮められずに到着した金沢に、加越90号の姿は影も形もなかった。18きっぷの泣き所を見事に突かれた格好となった。

 最後までドタバタ

  2002年のNHK大河ドラマの主人公、前田利家が礎を築いた百万石の都・金沢。まるで新幹線駅のようなりっぱなホームの駅で、私はまたひと思案する羽目になった。

  指定席特急券で所定の列車に乗り遅れた場合は、同日中の後続の自由席に乗車できるというルールがある。次の特急は「サンダーバード44号」。これに乗れば、敦賀での接続は加越90号の場合と同じになる。しかしこの列車は富山・和倉温泉始発で、自由席はすでに満員。1時間超、デッキで立ちんぼうを覚悟しなければならない。一方、別のホームで出発を待つ金沢始発の臨時「サンダーバード98号」には、まだ空席がありそう。しかしこれに乗ると、敦賀での接続には間に合わず、京都まで行くしかない。

  しかしここまで忘れ物とダイヤの乱れに翻弄され続けてきた私に、もはや余力はなく、「98号」で座るほうを選択する。結局、忘れ物の代償となる追加投資は総額6,850円。青春18きっぷ3日分相当の余計な出費となったが、その投資のぶん楽をさせてもらうことになった。電車の窓明かりで照らされる沿線の雪を眺めながら、北陸路を南下。普通列車の旅をずっと続けてきた身には、恐ろしいほどの快適さだった。

サンダーバード車内。快適〜 

  金沢 18:06[02] → 京都 20:30[27] [特急「サンダーバード98号 8032M/電・681系]

  福井県から滋賀県に入り、積雪も徐々に減ってきた。「雪見旅」で必ず訪れる、雪景色との別れ。それはまた旅の終わりのときでもある。琵琶湖の西岸を快調に南下するうちに雪はまだらになり、京都入りで完全に消えてしまった。雪見旅、もし状況が許すならまた来年。「サンダーバード」を降り、おなじみ新快速で家路を急ぐ。

  京都 20:32[31] → 新大阪 20:57[54] [新快速 3251M/電・223系]
  新大阪 21:01 → 神戸 21:37 [快速 827T/電・221系]

  途中所用で電話をかけるために新大阪で降り、次の快速で神戸に向かったが、それでも神戸到着は、富山からすんなり鈍行乗り継ぎした場合の当初の予定より数分早くなった。最後はドタバタしてしまったが、最後の追加投資に目をつむれば、なかなかスパイスも効いた面白い旅行だったのではないかと思う。

 

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