車両紹介−特急ほか

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 昼行特急

 スーパーはくと

  1994年に山陽〜山陰を短絡するバイパス線として開通した「智頭急行」線(上郡〜佐用〜智頭間)を経由して、京阪神と鳥取を結ぶ特急。かつて特急「あさしお」「はまかぜ」が担っていた役割を引き継いでいます。

  JR神戸線内では大阪・三ノ宮・明石・姫路に停車します(下り13号は神戸・西明石・加古川にも停車)。使用されるHOT7000系は気動車ながら最高速度130km/hを誇る振り子式で、大阪〜鳥取間を約2時間半で走破。人気の高い列車です。

  当初はキハ181系による特急「はくと」と併用されていましたが、1997年にHOT7000系に統一されました。JR初期には、新型車やリニューアル車を使用した列車を既存車両の列車と区別するために「スーパー」を冠することが多かったのですが、この列車は新型に統一された後も「スーパーはくと」で通しています。その後の山陰特急(いなば、おき、くにびき→まつかぜ)においては、車両の置き換えとともに愛称が「スーパー○○」に変更されています。

市川を渡る「スーパーはくと」 

貫通形の先頭車 

 はまかぜ

  大阪と兵庫北部とを播但線経由で結びます。寝台特急「出雲」廃止により、山陰本線城崎温泉〜鳥取間に入る唯一の優等列車となりました。大阪より三ノ宮・神戸・明石・姫路に停車(下り5号は西明石・加古川にも停車)し、姫路でスイッチバックして播但線に入ります。

  かつては鳥取から先、倉吉・米子まで達し、関西と鳥取県方面を結ぶ役目も担っていましたが、智頭急行開通に伴ってその役割を「(スーパー)はくと」に譲り、同じく播但線経由の急行「但馬」を吸収して、主に兵庫県南北間の連絡に徹するようになりました。なお、この列車で大阪〜和田山間を直通する場合、より距離の短い福知山線経由で運賃・料金を計算する特例が適用されます。

  ながらく国鉄世代のキハ181系が使用され、晩年は同系列最後の定期列車となりました。グリーン車を連結し、通常は4両編成ながら、多客時には最大7両となるなど、かつての特急の貫禄を残す存在でした。最高速度は120km/hで、新快速より停車駅の少ない特急でありながら、神戸線区間では新快速に追い立てられ、なんとなく肩身の狭い立場でした。

  2010年11月7日より最高速度130km/hのキハ189系に置き換えられました。普通座席車のみで、基本は3両編成。「特急」でありながら、JR神戸線を走る旅客列車としては最短の編成です。多客時には3両編成を2つ連ねた6両編成になります。

新型キハ189系の6両編成 

キハ181系時代。最短4両だがグリーン車込み 

キハ181系の7両編成 

 らくラクはりま

  2019年3月改正で大阪〜姫路間に登場した通勤特急(運行開始は3月18日)。2021年3月改正で新大阪発着になりました。朝に姫路→新大阪、夕方に新大阪→姫路へと1往復するダイヤです。

  大阪から東側のJR京都線区間には、JR発足後間もないうちから特急車両の間合いで運転される「びわこライナー」(後に特急化されて「びわこエクスプレス」)がありました。一方で、大阪以西のJR神戸線区間には山陰方面に直通する特急「はまかぜ」「スーパーはくと」があるものの、通勤用途に特化した優等列車は設定されてきませんでした。

  しかし近年、移動にゆとりを求めるニーズの増加と、少子高齢化の進む中で増収の道を探る鉄道事業者の思惑から、グレードの高い有料列車・有料車両を導入する動きが鉄道各社に広がっており、2019年、新快速への「Aシート」導入とともに改正の目玉の一つとなったのが、特急「らくラクはりま」の運行開始でした。電車の昼行特急がJR神戸線区間を定期的に走るのは、一時「雷鳥」が神戸まで乗り入れていたのを除けば、1975年の山陽新幹線全通以来のことと思われます。

  車両は「くろしお」用の289系6両編成を使用。指定席・グリーン車も含まれます。停車駅は新大阪・大阪・三ノ宮・神戸・明石・西明石・大久保・加古川・姫路と、尼崎・芦屋を通過し大久保に停車するほかは新快速と同じです。なお、夕方ラッシュ時には「はまかぜ」「スーパーはくと」も大久保以外同じ停車駅に停まり、大阪→姫路間では約1時間おきに3本の特急が通勤特急的な役割を果たすことになります。

早朝の上り「らくラクはりま」 

 寝台特急

 サンライズ出雲/瀬戸

  285系は1998年登場の寝台特急用電車。「サンライズ出雲」(東京〜出雲市)・「サンライズ瀬戸」(東京〜高松)各7両編成で、東海道・山陽線内では併結されて計14両編成となります。寝台はすべて個室で、このほか指定席特急券で乗れるカーペット敷きの「ノビノビ座席」も各1両連結しています。

  神戸線内では、上りは姫路・三ノ宮・大阪に深夜の停車。下りは姫路のみ停車。2006年春に山陰本線経由の寝台特急「出雲」が廃止され、「サンライズ出雲」は東京から唯一山陰に直通する列車となりました。2009年3月改正以降は東海道〜山陽区間を走る唯一の寝台列車、そして現在では全国でも唯一の寝台特急となっています。

「夜」から「朝」へ 

 臨時列車

 かにカニはまかぜ

  JR西日本が冬場に力を入れている「かにカニ列車」。京阪神圏と兵庫北部(城崎温泉・香住・浜坂方面)を結ぶもので、かつては急行・特急が数種類ありましたが、現在増発列車として残っているのは「はまかぜ」の臨時便にあたる「かにカニはまかぜ」のみ。日帰り客向けに、朝に大阪を出て、かにの本場香住に行き、晩に帰ってくるダイヤです。

  かつてはキハ181系での運転でしたがグリーン車はなく、全車普通車指定席での運転。独自のヘッドマークを掲げていました。2010年いっぱいはキハ181系で運転され、その後キハ189系に置き換えられました。

国鉄色時代。大阪に到着 

キハ181系引退間近の「かにカニはまかぜ」 

 サンライズ出雲91/92号

  2014年末から多客時の臨時列車として設定されています。定期便と異なり「瀬戸」はなく、「出雲」だけの7両編成。下り「91号」は定期の下り「出雲・瀬戸」が停車しない大阪・三ノ宮に6時台に停車し、上り「92号」は三ノ宮・大阪に22時前後に停車。阪神圏を早朝深夜にほぼ素通りしてしまう定期便に対し、こちらは何とか利用できそうなダイヤです。そのかわり下りの出雲市到着は13:07、上りの出雲市出発は15:33と所要時間はかなり長め。(ダイヤは2016年5月設定時のもの。)

  定期便はJR神戸線内での撮影は困難ですが、「91号」であれば日の長い時期なら何とか、というところです。

7両編成でJR神戸線内をゆく 

 トワイライトエクスプレス瑞風

  2017年6月から運行を開始したクルージングトレイン。

  従来型の輸送手段としての夜行列車が衰退する一方で、2013年に運行を開始したJR九州の「ななつ星in九州」の成功を機に、周遊観光列車としての寝台列車が脚光を浴びるようになりました。

  大阪〜札幌間で運転されていた豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」が北海道新幹線開業を前に2015年3月で運行を終了し、その名称や車両の意匠を引き継いで「瑞風」が登場しました。なお、旧「トワイライト」車両(24系客車の改造車)は2016年春までJR西日本エリア内で団体列車「特別なトワイライトエクスプレス」として運行されました。のちの「瑞風」に似たコースを辿っており、その運行に先駆けたリサーチの意味もあったのでしょう。

  「瑞風」は新製された87系気動車10両編成で運行されます。先代から受け継いだ深緑色の車体にゴールドの装飾が施され、先頭には特徴的なデッキを備えます。車両形式には「ななつ星」と同様、かつて一等車を表す記号だった「イ」が付され、JR西日本の最高クラスに位置づけられた列車です。

  2017年時点で山陽コース、山陰コース、周遊コースが設定されており、山陽コースの下り・上りおよび周遊コースの往路において神戸線区間を通過します。

展望デッキ付きの先頭部 

先頭車側面 

 かつての列車

 寝台特急「なは」

  「なは」は24系客車、B寝台中心の編成で、B寝台個室(ソロ・デュエット)も組み込んでいました。2004年3月までは西鹿児島(現・鹿児島中央)まで乗り入れる唯一の寝台特急として残っていましたが、九州新幹線新八代〜鹿児島中央間の開通に伴い、熊本止まりとなりました。

  寝台列車縮小・統合のご時世にあって、関西〜九州間の列車も次第に淘汰され、2005年10月に南宮崎行き「彗星」が廃止されると、それまで京都〜門司間で「彗星」と併結されていた長崎行き「あかつき」が、熊本行き「なは」と組むことになりました。(鳥栖で分割・併合。)

  最終的な運転区間は京都〜鳥栖〜熊本間。鳥栖から先は電源車+旅客車4両という、ブルートレインとしては寂しい編成でした。2008年3月14日出発分をもって、「あかつき」共々廃止。九州新幹線の全通を待たずして、関西発着の九州夜行は全廃となりました。

EF65に牽引された、単独時代の「なは」 

24系「なは」電源車側 

「デュエット」のロゴ。晩年は車体の傷みが目立った 

 寝台特急「あかつき」

  「あかつき」は関西と長崎を結ぶ寝台列車で、かつては2往復運転され、うち1往復は西鹿児島(現・鹿児島島中央)発着の「明星」と併結されていた時代もあります。86年以降は、新大阪(のち京都)〜肥前山口(分割併合)〜長崎・佐世保間1往復体制となりましたが、2000年には南宮崎発着の「彗星」と併結されるようになり、佐世保発着分は廃止されました。

  2005年10月に南宮崎行き「彗星」が廃止され、「あかつき」は、熊本発着の「なは」と組むことになりました。(鳥栖で分割・併合)。最終形態としては、国鉄末期の「明星+あかつき」に近い格好となりました。

  「あかつき」は、A個室、B個室、そして普通座席指定席「レガートシート」を組みこんでいました。最終的には14系客車6両編成での運転、京都〜下関間ではEF66の牽引で、神戸線内の停車駅は大阪、三ノ宮、姫路でした。

  「あかつき」も「なは」と共に、2008年3月の改正をもって廃止。ペアを組んだ相棒をことごとく失い、自らもついに役目を終えたその歴史は、まさに寝台列車退潮の過程そのものでした。

単独時代。早朝の山陽本線にて 

「なは」と併結。機関車の後ろがレガートシート車 

下り列車最後部がレガートシート車だった 

 寝台特急「彗星」

  関西〜大分・宮崎方面を結んでいた寝台特急。14系客車で運転。

  寝台列車統廃合の流れの中、2000年以降は長崎行き(下り準拠)「あかつき」と併結されていました。最終的な運転区間は京都〜門司(分割併合)〜南宮崎間。「彗星」は2005年9月末をもって廃止。同時に「あかつき」は熊本行き「なは」と併結されるようになりました。

単独時代の「彗星」テール部 

EF66牽引、「あかつき」との併記ヘッドマーク 

 臨時寝台特急「サンライズゆめ」

  「サンライズエクスプレス」の285系電車を使用して、多客時に東京〜広島・下関間で運転されていた寝台特急。「出雲・瀬戸」が阪神圏を深夜・早朝のうちに通過してしまうのに対し、「ゆめ」は下りが5〜6時台、上りが22〜23時台となり、大阪・三ノ宮・神戸・明石・姫路に停車。下りは広島行き、上りは下関始発でしたが、主たるターゲットはむしろ京阪神の利用者だったのではないかと思われます。

  2009年夏以降、設定がなくなりました。寝台特急「富士・はやぶさ」や、臨時夜行快速「ムーンライト」シリーズの打ち切りに合わせたのだとすれば、これをもって山陽本線の倉敷より西を走る夜行列車は、臨時便を含めて完全に消滅したことになります。

下り「ゆめ」、夜明けの姫路にて 

 急行「但馬」

  大阪から姫路を経て、播但線経由で豊岡方面を結んでいた急行。キハ58系で運転されていました。

  国鉄末期にはまだ大阪乗り入れ列車があり、キハ58系が白昼堂々と、現在の神戸線を走っていたことになります。89年に大阪乗り入れ廃止。91年3月時点での時刻表によれば、姫路〜豊岡間、姫路〜鳥取間の計2往復、自由席のみ3両編成での運転でした。96年に特急「はまかぜ」に統合される格好で廃止。それまで播但線内ノンストップだった「はまかぜ」は、以降「但馬」の停車駅を踏襲して福崎・寺前・生野に停車するようになりました。

大阪乗り入れ時代、外側線ホームに 

  2004年5月には、大阪〜豊岡間にてリバイバル運転されました。

キハ58系4両編成のリバイバル「但馬」 

 臨時夜行快速「ムーンライト」シリーズ

  上記運転区間は運転終了前のもの。

  「青春18きっぷ」シーズンを中心に、近畿と中国・四国・九州方面を結んだ夜行快速列車。

  「ムーンライト九州」には「シュプール号」用の特急形客車(14系)が使用されていました。冬期にはこの車両が「シュプール号」にまわるため、一般車(12系)使用の「ふるさとライナー九州」として運転されていました。「シュプール号」廃止後は通年14系での運転に。大阪方先頭には展望車が連結されていましたが、最晩年にはなくなっていました。

  当初は京都発着で、一時期は熊本まで運転されていました。牽引機関車は下関以東の直流区間ではEF65またはEF66、下関〜門司間ではEF81、門司より西ではED76と九州向けブルートレインと同様で、2度にわたって機関車を付け替える、近年では希有な列車となっていました。

最後の夏、シュプール車をEF66が牽引 

大阪方にあった展望車 

  「ムーンライト高知」・「松山」は京都〜多度津間で併結運転。「高知」は18きっぷシーズンの一時期を除いて全車グリーン車での運転でした。

  利用者減や車両老朽化などの理由で年々運転日を減らしてゆき、ついに2008年度冬を最後に設定がなくなりました。2009年春に廃止された寝台特急「はやぶさ・富士」共々、九州向け夜行列車は臨時便を含めてすべて姿を消しました。ほどなく「シュプール」用の客車は廃車、JR西日本に在籍していたEF66もすでに全廃されています。

  「山陽」は「高知・松山」に併結され岡山で分割併合するダイヤでしたが、岡山駅の構内工事を理由に2005年以降設定がなくなったきり消滅しました。

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