JR九州の特急車両のパイオニアとなった「ハイパーサルーン」
客室が半両単位になっているのが特徴
登場:1988年
在籍:

  記載内容は2015年9月現在。
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 JR特急の方向性

  国鉄時代485系の独壇場だった九州に、民営化後からわずか1年後の1988年に登場した783系「ハイパーサルーン」は、それまでの特急電車のイメージを覆す斬新な存在でした。今でこそあたりまえになったステンレスボディや前面のパノラマ窓も、この電車こそが先駆となったといえます。

  当時中学生だった私としては、面白い電車が出てきたなと感じる反面、小学時代からあこがれていた「国鉄列車」の変貌には複雑な気持ちも抱いたものです。ともあれ、せっかく登場した電車、これを見逃す手はなく、その年の帰省の際には早速予定に組み込みました。乗ってみて特に興味を覚えたのは、ハイパーサルーンの最大の特徴である、乗降口を車両中央に設けて客室を二分したスタイルでした。座席も従来(485系)より幾分がっしりしたもので、JR九州の意気込みを感じました。

  客室を二分したのは、少ない車両数で自由席や指定席・禁煙席や喫煙席といった区分を柔軟に行えるようにする工夫でした。新幹線を軸としたパターンダイヤへの移行、また国鉄民営化に伴う合理化の流れの中で、特急の形態も運転の頻度を増し、その分編成の長さや運転区間を短くする傾向にありました。ハイパーサルーンは、まさにそうした新世代の特急の象徴的存在でした。

  ただし、「半室構造」は乗る側には圧迫感があり、そのせいもあってか、後の新型車両には継承されませんでした。

  この後、JR各社は競って新型特急車両を開発・登場させてゆきましたが、それらは「高速・高級志向」と「エコノミータイプ」に二分されている印象があります。「ハイパーサルーン」は、居住性や走行性能の向上という点では前者、使い勝手の面では後者の方向性を示したものといえるでしょう。JR特急車両の多くが、多かれ少なかれこの電車からの影響を受けていると思われます。

鹿児島本線で「つばめ」として走行した 

 使い勝手のいい電車?

  さて、当初鹿児島本線の特急「有明」に投入された783系ですが、そのころは従来車と区別するため「ハイパー有明」を名乗り、新型車両であることが時刻表上で一目瞭然でした。今や、列車名に「スーパー」と冠して特別性をアピールしたり、「○○車で運転」とわざわざ注記を付したり、果てには車両の愛称をそのまま列車名にしたり(サンダーバードなど)といったことが、あまりにも一般化してしまいましたが、その先駆けとなったのも、このハイパーサルーンだったわけです。

  92年夏には後進の787系が登場、西鹿児島(現 鹿児島中央)に達する「有明」が「つばめ」と改称され、783系と787系の半々で運転されるようになりました。787系などのJR九州の次世代車はさらにグレードが上がり、初期の力作であったハイパーサルーンでさえ見劣りがしたためか、94年からはデビュー6年にして早くもリニューアルが始まりました。

  その後は「つばめ」から「有明」「にちりん」「かもめ」さらには「みどり」「ハウステンボス」へと、新型車登場のたびに持ち場を変えられています。「かもめ」・「みどり」・「ハウステンボス」三本立てで13両の長大編成となることもありました。「みどり」と「ハウステンボス」の併結のために、817系タイプの貫通形に先頭化改造された車両も登場しました。

かもめ・みどり・ハウステンボスの3本立て 

貫通タイプの「ハウステンボス」 

  九州新幹線の開業に伴って運用は更に変化し、いいように使いまわされているようにも思えますが、それだけ融通の利く車両だということであり、当初の目的にはかなっているといえます。現在では九州内の「ソニック」と「川内エクスプレス」を除く電車特急に使用され、依然マルチプレイヤーぶりを発揮しています。

  

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