#002

  日本海側には自然の造形が豊富だ。起伏の激しいリアス式の海岸が続くこと、また特に冬場に絶えず押し寄せる厳しい波風の浸食作用によるのだろう。若狭湾に位置する高浜・城山公園で目にしたこの奇岩もその一つだ。

  「明鏡洞」という名は、洞穴の向こうに見える海が、鏡のように見えることからつけられたと言う。見渡す限りの水平線というのも気持ちのよいものだが、こうして一部分を切り取る風景にも趣がある。天然のトンネルを打ち抜いた日本海の猛々しさと造形の妙に、恐れ入るところである。

  「城山」の名が示すとおり、かつては高浜の半島部を自然の要害とした城があったという。人が地形を作り替えるより、人が地形に合わせて営む。これも、日本海側に絶景が数多く残る理由だろう。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #002