#004

  幹を見るに、かなりの老木と察せられる。そこから出る細い枝は、度重なる積雪のためか折れ曲がっている。雪の重みで折れたり傾いたりした木々に出会うことは、豪雪地帯を旅していれば珍しくはない。だが、この米沢城の歴史を思うと、そこに特別な意味合いを感じられる。

  江戸時代の米沢藩初代、上杉景勝は広大な越後の地から大幅な減封によって米沢に入り、藩の財政は慢性的に逼迫していたという。しかし、景勝の重臣直江兼続や、9代藩主上杉鷹山らの尽力あって、幕末まで命脈を保つことができた。決してスマートではないが、過酷な環境をねばり強く生き残ってきたあるじの姿を、この木は体現しているのだろうか。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #004