#006

  四国の山はとにかく険しい。しかも絶壁のような急斜面に、耕地があり、民家がある。どうやってあそこまで行けるのかと不思議になる。朝霧がいまだ晴れず、中腹より上を隠しているから、なおさら達しがたく思える。ただでさえ遅い冬の夜明けだが、この峡谷にはなかなか訪れそうにない。

  谷底を流れているのは吉野川。「大歩危」という見るからにものものしいこの地名、それだけここが訪れる者を阻む地だったということを物語る。土讃線の線路はこの狭い谷に沿い、トンネルを出入りしながら進んで行く。

 

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