#008

  海に程近いところにまで山が迫り、斜面に張り付くように民家がそそり立つ光景は、港町ならではだ。古びたホーム、新緑の色、レトロ列車。何気なく降りた駅だったが、列車が去るまで思わず見入ってしまった。

  港を望む佐世保駅から松浦鉄道に乗ると、すぐに短いトンネルに入る。佐世保中央駅を出て、国道をまたぐとすぐ中佐世保駅。その間200mで、日本最短の駅間だという。

  乗ってきたのは「レトロン号」という観光タイプの車両。この2000年にデビューしたばかりで、私はその情報を持っていなかったので、全く意図しない遭遇であった。このまま乗っていたい気分だったが、その後のスケジュールの兼ね合いもあり、慌ただしく下車した。

  松浦鉄道は、本土最西端のたびら平戸口駅へと向かう。いつかこの列車に乗って、西の果てを巡りたい。

 

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