#013

  雲の上の空。それは生まれて初めて見る光景だった。21世紀最初の日、それは私にとって、初めて飛行機に乗った日でもあった。

  雲に覆われた大阪空港上空。加速をつけた機体は重力を振り切り、大きく旋回して下界を後にする。飛行機に乗り慣れた人間にはごく当たり前の光景だろうが、初めてのものは何もかも新鮮だ。やがて雲を突き抜け、その上に達する。そこに広がる空の青さは、これまでに見たことのない色だった。

  もはや地上は遠い。だが思いの外、はっきりと様子が見て取れる。「手に取るように」という表現がふさわしい。これから目指すのは、これまた生涯初となる、北海道の地だ。

 

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