#017

  鉛色の空の下、腹の底に響き渡る波の音。重々しく、かつ荒々しい冬の日本海には、独特の魅力がある。

  本州の北の果て近く、その日本海沿岸を進む五能線。その車窓を流れてゆく風景は、実に荒涼としたものだ。海はひたすらに波立ち、むきだしの岩場に間断なく打ち付ける。休むいとまを与えない圧倒的な何かが、車内にいる自分にも容赦なく迫る。

  その空気をじかに感じたくて、十二湖という駅で下車して海岸近くに立つ。写真は手ブレしないよう、岩場に置いてセルフタイマーで撮影した。光を失いつつある空のもと、海岸にぽつぽつと灯るあかりが、長い夜の訪れを告げる。

 

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