#021

  漁港から、上り坂となった橋で海を渡り、高台から一望する。なかなかの規模の大きな港であり、右側には仙崎の町並みが広がる。

  今いる島は「青海島」とよばれる。本州の西端、その日本海側は「北長門海岸国定公園」に指定され、仙崎港からはこの青海島を一周する遊覧船も出ている。残念ながら、歩いてゆける範囲で、そこまでの絶景にお目にかかれるわけではないが、こうして入り江に広がる港町を眺めるのも悪くない。

  道中、地元の人に「金子みすゞのことを聞いてきたのか」と尋ねられた。不勉強な私はその名すら知らず、返事に窮したが、調べると近年脚光を浴びだした大正・昭和期の詩人らしい。その時代の作家にありがちな幸薄い生涯だったようだが、その作品には故郷・仙崎への思いが色濃く反映されているという。

 

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