#032

  「レトロ」と呼ぶには無機質で、かといって「古びた」というのも少し気が引ける。水島臨海鉄道で今も現役の旧式気動車。その内装は、恐らく当初と大きくは変わっていないのだろう。たいしてスピードは出さす、倉敷市街地の中をゆったりと進んでゆく。

  キハ20形とよばれるこのタイプの車両は、昭和30年代以降、ローカル路線の気動車普及に足跡を残した存在だ。どことなく窮屈そうな座席などは、その時代の規格によるのだろう。JRでは大半が姿を消したが、地方私鉄にいくらか残っている。このひと月ほど前には、「赤穂線40周年記念列車」として、JR路線を走った。「古さ」を買われての活躍である。

 

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