#044

  かつてSLやまぐち号に乗ったとき、「SLは乗るよりも見るものだ」という感想を抱いたものだ。SLの牽く列車といっても、いざ乗ってしまえばSLは見えないので、普通の列車とさして変わりがない。蒸気機関車の醍醐味は何と言っても、煙を吐き、轟音を立てるその姿にあると思う。

  それを間近に体験できるのがこの梅小路蒸気機関車館だが、小学生、中学生の時以来、この2003年まで来る機会がなかった。久々に目にする「動くSL」だが、なぜか子どもの頃よりも、その存在感が圧倒的に感じられた。これは不思議な経験だ。

  蒸気機関車を動かすには多くの人の手がかかる。緻密な管理と熟練を要する、人間くさい機械だ。それを知るようになったからこその感慨があったのかもしれない。また、実際にSLを動かしていた祖父を持つ身であったことも関係しているのだろう。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #044