#061

  大畑と書いて「おこば」と読む。人吉から延々と坂を登り、着くのがこの駅。「ループ線」のさなかにあり、列車はこの後、大きな円を描いて更に登ってゆくことになる。観光列車「いさぶろう」は、それに備えるべく、ここで小休止を挟む。

  周囲に民家はない。それでも、駅舎は昔ながらのたたずまいを今に残し、味わいがある。人の乗り降りのための駅というよりは、列車が休むための駅といえる。ループ線とスイッチバックを兼ね備える唯一の存在として、もともとファンの間では名所であったが、観光列車が走るようになって、多くの人が見物できるスポットになった。

  達しがたい地にある「秘境駅」が静かなブームと聞くが、大畑はその代表格の一つだろう。列車がわざわざ途中下車の時間を挟んでくれる現状、本当の意味での「秘境」とは言い難いかもしれないが、SL時代にはここで給水を行っていたというから、昔への回帰ともとれる。

 

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