#067

  立野からスイッチバックを経て、上り詰めると、これまでの険しい道のりからは一転、のどかな風景が広がる。

  南には阿蘇本山、そして北に連なる山々は、まるで今居る平地を取り囲む城壁のようにそびえている。火山の火口付近が陥没するなどしてできた「カルデラ地形」だ。カルデラとは「鍋」を意味するらしい。言い得て妙だ。

  火山には殺伐としたイメージが付き物だが、この阿蘇カルデラは爽やかな緑に覆われ、人の生活があり、列車が駆け抜ける。鍋底の箱庭のような空間に自分がいると思うと、不思議な気分になる。

 

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