#068

  凝視していると、吸い込まれそうな恐怖感を覚える。むき出しの地層が大きなうねりを見せている。もちろん、これ以上前へは進めない。

  阿蘇の山は全体として、なだらかなカーブを描き、一面を草や低木に覆われている。だが、火口に近づくにつれて、岩石が露出し、殺風景になってゆく。そして火口近くはこのとおり。草木を寄せ付けない死の世界だ。只の人間が、こんな所に足を踏み入れてよいのかと、畏怖を覚える。

  このうねりは、大地の蓄えるエネルギーのほんの一端なのだろう。だが今、火口は湯気のような煙を出すだけで、至っておとなしい。

 

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