#093

  関西本線には、ひなびた裏街道の風情がある。細々と山越えに挑む線路に、中京と関西を結ぶ幹線としての機能は失われて久しい。それでも、明治の昔には、官設鉄道(現在の東海道本線)と果敢に競った歴史がある。狭いながらも石で組まれたトンネルに、その時代の誇りが感じられる。

  京都南部の加茂からディーゼル列車に乗り換えて、谷間へと進むにつれて、霧が立ちこめてきた。冬の朝日に柔らかなフィルターがかかり、幻想郷のような雰囲気を醸し出す。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #093