#095

  和歌などで「花」と言うとき、多くは桜の花を指す。「花見」といえば普通は桜の花見だ。花の代表として桜を愛でるのは、日本人に深く刷り込まれた美意識なのだろう。

  宇治市街を流れる宇治川。10円玉の絵柄にある平等院鳳凰堂が近い。桜の名所と聞いてやってきたが、満開の時期は過ぎていた。次の主役は我々だとばかりに、咲き誇った花びらを追い出そうと、若葉が隙間から出番をうかがっている。川の流れのように、季節の巡りは絶え間ない。

  物事は、初めや終わりこそ味わい深い。盛りの時だけはしゃぐのは、いかにも品がない。古典の代表格「徒然草」に、そのようなことが書かれていたのを思い出す。

 

トップ > 活動写真 > 十年の旅百景 > #095