#097

  陰鬱な夕刻の谷間。コンクリートで固められた護岸の間を、轟々と流れてゆく濁流。河床に突き刺さるように頭を出す岩石が生々しい。この川の名は「姫川」。その名に似つかぬ暴れ姫だ。しかしこんな谷にも人の生活があり、そして鉄道がある。

  JR大糸線の道のりは険しく、危うい。2年以上にわたって不通になった時期もある。かつて冬季に走っていたスキー列車も、もうない。今は、古株の気動車がその路を守る任を負う。ただ1両の、孤独な行路だ。

 

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