短編成で走るロングシート電車
西日本の電化ローカル路線を活動領域とする
登場:1981年
在籍:

  記載内容は2015年9月現在。
  写真はクリックで拡大表示します。ブラウザーの<戻る>でお戻りください。

 ローカル版103系

  かつては電車といえば長いものでした。なぜなら、優先的に電化される路線は主要幹線であり、電車は輸送力の必要とされるところに投入されるものだったからです。このため、都市圏に投入されたいわゆる新性能電車は、複数の車両でユニットを組んで編成を組むことを前提にしていました。一方、電化されていた地方路線(私鉄を国有化したものが多い)には、かつて都市圏で活躍した旧型国電が転用されました。新性能車以前の電車は単独で動ける構造だったので、短い編成で運用するには都合が良かったのです。

  しかし地方の未電化路線にも電化が波及し、また老朽化した旧型国電の置き換えの必要もあって、新性能の短編成車両のニーズが高まる中で登場したのがクハ+クモハの2両編成を基本とする105系でした。通勤形の103系をベースにした設計ですが、ドアは3扉、先頭部の顔つきは当時流行りのパンダ顔で貫通扉を備えています。同様の設計でセミクロスシートであった119系と外見が類似しています。

  ただし財政の逼迫した国鉄末期ゆえに新造は60両にとどまり、あとは103系からの改造でまかなわれました。改造車は103系と同じ4ドアで、その多くは片側(クハ側)に103系1000番台の先頭部をそのまま利用しています。

和歌山近郊で運用される4扉の105系 

クハ側は103系1000番台タイプの先頭車 

  近畿では84年に奈良線・和歌山線が電化され、その際に105系が導入されました。小学生のとき奈良線の105系に乗車しましたが、窓をあけっぴろげて(未冷房だったと思われる)走り、アナウンスが全く聞こえなかったという記憶が残っています。奈良線は今でこそ221系が快速として疾走する主要路線のひとつとなっていますが、当時はやっとローカル線に架線が張られたというレベルの路線でした。現在奈良線で105系は運用されていません。

 105系の現状

  105系は4両がJR東日本の仙石線に投入(既に全廃)された以外はすべてJR西日本に承継されています。新造投入された車両(3ドアタイプ)は近年113系などと同様の延命リニューアルが施され、窓サッシや屋根周りがすっきりしました。

  近畿圏では、和歌山線・桜井線および紀勢本線の実質的支線である和歌山〜和歌山市間で主力を担っています。また、紀勢本線の紀伊田辺〜新宮間でも運用されています。塗装は昨今のJR西日本の施策から、青緑色単色への移行が進められています。

紀勢本線の南側区間で 

  岡山エリアでは福塩線を中心に運用されています。以前は赤穂線や伯備線など広くカバーしていましたが、今はその役を213系に譲っています。現在では濃黄色単色へ移行中。

赤穂線にて 

  また広島エリアでは呉線・可部線、山口県内では宇部線・小野田線といった支線系統で活躍しています。こちらも濃黄色に変更されます。

呉線の車両 

  和歌山線や紀勢線南部などではかなり長時間の運用を持ちますが、オールロングシートで景色を楽しめず、もともとの用途からして長距離向きの車両でないうえに国鉄時代の車体とあって居住性には厳しいものがあり、乗り継ぎ旅ではあまり出会いたくない車両です。それでも、113系・115系などでさえ短編成化して地方に送り込んでいるJR西日本エリアの中では、今もなお貴重な戦力です。

 

 トップ > 車両所感 > 105系